acts_nav

キンシャサ・ロックの萌芽...Stukas・Zaiko Langa Langa・Isifi Lokole/ Yoka Lokole/ Isifi・Makina Loka

Gaby Lita Bembo & Orchestre Stukas du Zaire: Kita Mata ABC (CD, RetroAfric RETRO18CD, 2005 re-issued)

Samba (Lita Bembo) 1983?
Idee Kono {Idee Econo} (Lomingo Alida) 1977
Toto Seya (Lita Bembo) 1978
Lobelia (Suke Bola) 1978
Presidents (Lita Bembo) 1978
Odeyo (Lita Bembo) 1974?

http://www.sternsmusic.com
http://www.retroafric.com

 ロンドンでネット・ラジオ「Nostalgie ya Mboka」を運営しておられるVincent Luttman氏による、Stukasの発掘音源集である。彼等の魅力をコンパクトに俯瞰出来る優れた選曲であり、初めて聴かれる人には先ずはこれをお薦めしたい。1974年から1983年にリリースされたシングルの、マスター・テープから起こした良好な音源である。個別の曲についての発表年は記載されていないが、コールされるダンスやミュージシャンの名前からほぼ推定出来る。上に記載した年代は所有の原盤シングルから確定(「Odeyo」原盤には発売年の記載はない)。「?」のあるものは歌詞などから類推した。なお、オリジナルのシングルと、再発されたCDやLPとの重複関係については、所有している音源の曲名順対照表を別途掲載しておいたので参考にしてほしい。先取りしていうならば、Suke Bolaの「Esta Bibisha」という1曲以外は、2007年現在発売されている以下の6枚のCD全てを購入しても、CD収録曲同士では重複しない。ただし、ほとんどワン・プレスで廃盤になっているから、見つけたら迷わず購入すべきである。なお表記については、Lita Bemboは、Gaby Lita・Nkolo Kwanga・Libekk Libekiなど、複数のクレジット名を使い分けているが、全て「Lita Bembo」で統一、また、Suke BolaやFimbo Gerryなども、いくつかの表記があるものについては、混乱を避けるため統一した。また、同名異曲としては、Suke Bolaの「Wangata」と、Lita Bemboの「Wangata」があり、同曲異名は{ }で注釈した。

 楽曲であるが、2曲目の「Idee Kono」 (シングル盤の表記は「Idee Econo」) 以外は、知る限りシングルで出ただけで再発されていない。その「Idee Kono」も、日本には殆ど入らなかったSonodiscのアフリカ音楽紹介LP (Sonodisc360112) に収録されたきりで、このLPは影も形も見たことがない。このCDに収められた6曲は、いずれも他のCDと重複していない。1曲目の「Samba」に至っては、1983年頃のリリースと思われるが、そのシングルの存在も我々には知られていなかった。まさにレア音源、しかもアルバムの1曲目を飾る渾身の一撃である。Vincent氏の聴識耳と、これらのマスター・テープを発掘されたご努力に心からの敬意を表したい。

 さてこのCD、Lita Bembo本人にインタビューした英語による解説がある。それによると、彼は1970年代を通じて、老若男女を問わずキンシャサ市民にこよなく愛されたタレントであった。180cmを越える長身とダイナミックな動きは、当時のキンシャサの悪ガキどもに、質の悪いモノクロテレビにかじりついてその一挙手一投足を凝視させるほど、魅惑的なものだったという。仲間伝いに回ってくるStukasの古い動画などを見ていると、確かに当時の他のグループのスター歌手と比べて、明らかにLita Bemboのファッション、立ち居振る舞いは、華麗であり過激であり、新しさは別格である。

 1974年に、「キンシャサの奇跡」と呼ばれた、Muhammad AliとGeorge Foremanによるボクシングの世界ヘビー級タイトル・マッチを記念して行われた、国を挙げての一大ブラック・ミュージック・フェスティバルに、James Brownが出演することが決まった頃、「いい子にしてないとJames BrownがLita Bemboをアメリカに連れてっちゃうよ」というのが、母親がきかん子を黙らせる常套句だったらしい。ちなみにそのフェスティバルは、当時のザイールからはからTrio Madjesy率いるL'orchestre Sosolisoがオープニングを飾り、Manu Dibango、Myriam Makeba、B.B. King、そしてFania Allstarsが出演、Jonny Pachecoが「Que, viva la musica!」と叫んだのを、客席で見ていた若き日のPapa Wembaが、来たるべき自分のバンドの名前を決めたというのはあまりにも有名な話である。その1974年と、1978年、1979年にLita Bemboは、当時のザイール各誌から最も偉大なショウマンとして、また1976年と1977年の「FIKIN」 (La Foire Internationale de Kinshasa毎年7月にキンシャサで行われている芸術や産業博覧会の一環としてのオール・スター・キャストによる一大野外コンサート) で「最もセンセーショナルな男」として表彰されている。

 さてStukasは、キンシャサで初めてロックをやって成功し、その後の音楽シーンに多大な影響を与えたグループの筆頭である。「Stukas」とは、第二次世界大戦中のドイツ空軍の急降下爆撃機「JU87型」の通称であり、「Sturzkampfflugzeug (急降下爆撃機)」の省略形である。その一部の型式には、急降下の際に大音響でサイレン音を発するものがあり、当時は連合軍に「悪魔のサイレン」といって怖れられたという。グループは、1968年に結成され1986年に解散している。私は生で見たことはないが、在籍したミュージシャンの何人かとは面識がある。歌手のLomingo Alidaを中心にした若者のグループにLita Bemboが合流する形で始まり、Lomingo Alidaの「T.P.O.K. Jazz」への移籍を以て終結を迎える。このLita Bemboは、Stukasに若き日のPapa Wembaを誘い、彼を教会のコーラス隊からポップ・ミュージックの世界に引きずり込んだ悪の張本人とされている。Papa Wembaは、結局Lita Bemboの誘いには乗らず、翌年「Zaiko Langa Langa」に加入する。もしここで両者がグループを組んでいたら・・・と、なかなか過激な想像も成り立つのだが、Papa Wembaが加入しなかったことで、Stukasの名前が、後のインターナショナルな「ワールド・ミュージック」シーンの陰に隠れた形となったのは実に不運なことであった。

 しかしこのグループは、ザイールの音楽シーンを語る上で非常に重要である。全く重要この上ない。それは、Lita Bemboのショウマンとしての強烈な個性や、Kisola NzitaとSuke Bolaの奇想天外な楽曲はもちろんのこと、人脈として重要な人物だけをあげてみても、1983年頃からランダムにこのジャンルの音を聞きつつ演奏し続けて来た我々が、知らず知らずのうちに聴き分けて学び取り、お手本にして来た音そのものだからである。歌手のLomingo Alida (後にT.P.O.K. Jazz)しかり、Makolin (Victoria Eleison)しかり、それをサポートしたギタリストBongo Wende (Viva la Musica・Victoria Eleison)しかり、Dodoli (Veritable Victoria Principalを経てAnti Choc)しかり、Ndengas (Stunning Mangendaを経てRumba Ray)の魅惑的できらめくような音色とフレーズしかり、Nguma Lokito (Viva la Musica)のタイトで切れの良いベースしかり、ドラマーMbuta Nsekaのひたすらのスネア連打しかり、Awilo Longomba (Viva la Musicaを経てソロ)の低音グルーブしかり。「Viva la Musica」から両「Victoria」、そして「Rumba Ray」へとつながるその人脈は、「Wenge Musica」を経て「Swede Swede de Kintambo」にまで直結する。すなわちStukasこそ、まぎれもなくロック系のリンガラ音楽のメイン・ストリーム、日本人の我々がキンシャサから初めて世界に紹介した一連の人脈にほかならない。

 更に興味深いことに、Stukasはその初期に「Stukas Lokole」を名乗り、初期のダンスを「Ekonda Saccade」と名付けた。そして「Swede Swede」に通じる音楽的気脈があったということは、すなわちコンゴ河中流域Equateur (赤道)州付近に音楽的ルーツを持っていたことを暗示する。「Lokole」はその地方の代表的なスリット・ドラムの名称であるし、「Ekonda Saccade」はその地方に住む「Ekonda」という民族の「Saccade」(踊り)であるし、「Swede Swede」はその地方の音楽のジャンル名であるからである。コンゴ中央部Bandundu州からEquateur州にかけては、コンゴ音楽シーンに於いて、非常に重要なミュージシャンを多く輩出、あるいはルーツのある地方であって、私は、コンゴ、いやアフリカ大陸で、最も黒い音楽の産地ではなかろうかとさえ思っている。Stukasに在籍したミュージシャンは数え切れず、最盛期には二軍三軍のメンバーを抱えていたというが、ネットで配信されている彼等の初期のテレビ映像などを見ていると、たった6人で全盛期のT.P.O.K. Jazzに対抗しうる広がりや厚みと音楽的完結性を持っていた事に驚かされる。私個人としては、Stukasは、Viva la MusicaやT.P.O.K. Jazzに、心技体いずれ勝るとも劣らぬ実力を持っていたと評価しており、その彼等がインターナショナルなマーケットに乗ることが出来なかったのは、単に出るのが早すぎたからだと思っている。

 

La naissance & Les plus grands succes de l'orchestre Stukas, Vol. 1: 1969/74 (CD, Ngoyarto NG043)

Ekonda Saccade {autre version} (Lita Bembo)
Mayimba (Lita Bembo)
Lossikiya (Lita Bembo)
Nde okendeke (Lita Bembo)
Bebe ingende (Lomingo Alida)
Sisika Myre (Timambi)
Muasi (Lita Bembo)
Djoboke (Kisola Nzita)
Biboma boma (Suke Bola)
Azanga (Lita Bembo)
Souci (Lita Bembo)

 「キンシャサ・ロックの萌芽」・・・なぜこのようなテーマを立てたかというと、日本で我々が「リンガラ・ポップス」という言葉を使う時、特にこれで人生がおかしくなったバカ者どもが使う時、そこには一般の「ワールド・ミュージック」や「アフリカ音楽」とは一線を画する独特の感覚、思い入れ、スピリットなるものが込められているからである。これはキンシャサにしか発生しなかった。「リンガラ・ポップス」はアフリカ中に広まったが、それはこれを真似たものに過ぎず、正真正銘、単刀直入、質実剛健、本家本元、豪快無比、一刀両断、単純明快に言い当てるならば、すなわちこれはアフリカに於ける最初の「ロック」だったのである。「ルンバ・ロック」という言い方もあるが、敢えて「キンシャサ・ロック」という表現を使ったのは、まさしく、通り一遍の「アフリカ音楽」やら「ワールド系」のポップ・ミュージックとやらとは、全く異なる、精神性や肉体性も含めたあり方としての正真正銘の「ロック」が、唯一キンシャサだけに発生したことに心からの敬意を込めてのことである。

 上に掲げたCDは、Stukasの最初期の録音を集めたものである。これを聴くと、当時のザイール音楽シーンがゆったりとしたキューバ風のルンバから、次第に16ビートでアップ・テンポなダンス・ミュージックに変わりつつあった状況のなかで、彼等がいかにその音楽性を際立たせていたかがよくわかる。初めからアップ・テンポで歌い出し、まさに急降下するようにセベンに突入していく怒濤の激しさは、当時としては孤高のものであった。

 特に、創設時からリード・ギタリストとして活躍した"Le Professeur" Samunga及びそのリリーフとして1977年頃加入したKemboのギター・フレーズは、まさにロック・ギターであり、そのピッキング、フレージング、トーンから、我々のギタリストは非常に多くを学び、絶大な影響を受けた。不幸なことにこのSamungaは1977年に弱冠23歳で他界したが、KemboはSamungaのギターの精神を更に押し進め、ロック・バンドとしてのStukasの音世界を決定したといって良いであろう。その2年前に加入した我が良き盟友、若き日のBongo Wende (最初に紹介したCD, RETRO18CDのジャケット写真で歯でギターを弾いとるアホ) もまた、おそらく彼等に習って独特のポリ・リズミックなギター奏法を編み出し、彼はその後Viva la MusicaやVictoria Eleisonでの活動を通じて、インターナショナルな舞台へと羽ばたいて行く。彼等のギターと他を明確に分つもの、それは、他の演奏は「遅い」ということであり、すなわち彼等の脳内クリックは通常の倍速で刻まれているということである。

 また、この当時のベーシスト (たぶんDada Koma) のクールでタイトでスタッカートなフレージングは、多くの黒人音楽をマネし損ねてへたりこむ日本人バンドのリズム・セクションに、目から鱗の啓示を与えることであろう。この初期Stukasのリズム・セクションこそが、まさにルンバ・ロックの基本、いや黒人音楽の基本である。ソウルであろうがリズム・アンド・ブルーズであろうが、メロディやハーモニーなんかぞんざいで良いが、ベースやドラムなどリズム・セクションがヘタっているのは絶対に許されん。少なくともベースは音を伸ばすな。限界を感じたらStukasを聴け!

 世間の音楽史書によると、ルンバ・ロック第三世代のオリジネイターをZaiko Langa Langaとする見方が大半であるが、とんでもない。それは上に述べた音色の明確なユニークさと、下に紹介する当時のZaikoの初期の録音を聞き比べれば明らかである。また、絶頂期のStukasを「アフリカン・パンク」と言った人もある。しかしPunkというものは、Johnny Rottenが明確に宣言しているように、その精神性においてアナーキズムがなければならぬ。Stukasの音は時に過激であるが、それは物事を否定し破壊する過激さでも、絶望と閉塞に追いつめられた精神の爆発でもなく、徹底したショウ・ビジネスに於いて、要するに派手で目立つというわかりやすい精神性の現れであった。Zaiko Langa Langaも、当時の上流階級のサロン・ミュージック一辺倒だったルンバ・リンガラの世界に嫌気がさして、低所得者や若者にも受けるポップな音楽を希求したという点では新しい感性の集まりであった。しかしStukasはより新しかった。当時からすれば極端であり、華々しすぎた。やはり出るのが早すぎたのである。

 さてこのCDには、他とは明らかに性格の異なる3曲が含まれてる。アフリカン・ジャズ・スタイルの王道を淡々と演奏している「Azanga」と「Muasi」、そして彼等の最初のスタジオ録音である1971年録音の「Souci」である。「Style Bankolo Miziki (大人たちの音楽のように)」・「Style Jazz」などと註釈されていて、これらに共通するのは、こもらせた音色の通奏リズム・ギターの上に、ほわんほわんとした独特の高音ギターがメロディを奏でることであるが、この対比的な奏法は、明らかにアフリカの伝統的な木琴の下にぶら下げられた瓢箪に開けられた穴に貼られたクモの巣のビビり音をギターに移したものであって、ジャズ風のドラミングではなく、アフリカのシェイカーやギロを移したドラミングがそれを支えている。さらに霧島昇ばりのキンキン声で歌い上げるその徹底ぶりは、1940年代に活躍した爺さんたちの度肝を抜き、反骨精神の塊であったFrancoをして驚愕させたことであろう。素晴らしいの一言。先のCDでStukasにハマった人には、文句なしのお薦め盤である。かなり音質は悪いけどね・・・

 

Les plus grands succes de l'orchestre Stukas, Vol. 2: 1974/ 79 (CD, Ngoyarto NG044)

Moseka Mbunza (Lita Bembo)
Nostalgie (Lita Bembo)
Oli (Lita Bembo)
Dada (Suke Bola)
Lopata (Kisola Nzita)
Sta {Esta Bibisha} (Lita Bembo)
Gida Accordeon (Lita Bembo)

 上のCDの続編、彼等の絶頂期の名曲満載のCDである。女性コーラスも含めた華やかな陣容、様々に転調しめまぐるしく展開する楽曲、まだ「悪魔のサイレン」は聴かれないが、ひたすら疾走する曲調と、突然の意表をつくような展開、フェイザーをかけまくったリード・ギター、移動の多いタイトでリズミカルなベース、スネアとハイハットの見事な合わせ技、リンガラ・ポップスがその特長とする、華やかさ・楽しさ・激しさ・濃さを最も早く、しかも全てを存分に聴かせてくれる名盤である。

 当時はまだ、彼等の音源はシングル盤での供給であった。収録曲のうち、1976年に発売された「Nostalgie」と「Lopata」は、のちにSonodiscからのコンピレーションLP (Sonodisc 360112, 360122)のなかへ再収録されているが、その頃はまだ日本に入ってくる状況ではなかった。我々がこの時期のStukasを聴いたのは、ごくまれに入って来る砂だらけのシングル盤であり、我々はそれをテープにコピーしてもらったものをテープにコピーしてもらったものをテープにコピーしてもらって聴いていた。

 1曲目2曲目は、絶好調のStukasエンジン全開。これを聴いて踊らない奴は屁でもこいて家で寝とれ。そして現れる3曲目「Oli」、出だしは非常に古いスタイルのクモの巣瓢箪付き木琴風リズム・ギターのルンバの絨毯である。しかし次の展開でなんとその上にロックが走る! 歌が終わって続くセベンでクモの糸が切れたように爆裂し、途中のリズム・ギターの聴かせどころで、その倍速テンポでまた木琴ギターが再現される。曲は更にめまぐるしく展開し・・・これで音質が良かったらどんなにすごい曲であったことか。続く4曲目「Dada」の奇想天外でファンキーなテーマから一転してのルンバ展開とセベン、さらにカダンスに突然現れる牧歌的なフォーク感覚とマイナー・コード・・・彼等はつまり、意外性と、予定調和の破壊ちいうものをショウ・ビジネスの中で開花させることに成功したのではないかとさえ思う。

 6曲目の「Sta」は、LP (Sonodisc 360.131) では「Esta Bibisha」というタイトルで、またこの次に紹介するCD (Ngoyarto NG015) では「Esta 」というタイトルで重複して収録されている。この時期の録音としては音質、分離、ダイナミック・レンジともに良く、くりかえし取り上げられるだけあって素晴らしい名曲である。マイナー調の重々しい歌から始まって、突然展開するセベンはStukasの真骨頂。まさに彼等の醍醐味を大音響でも鑑賞出来るお薦めの録音である。話題性としては、Litaが自分をキリストを欺いたユダになぞらえて名付けた「Gida」のアコーディオン・バージョンが最後の7曲目に収録されている。この曲は「Zonga Zida」というタイトルで2バージョン、ほかにアコーディオンなしの「Gida」、そしてこのアコーディオン入り、さらにアコーディオンにリード・ギターが絡むものの、合計5バージョンが知られているが、そのうちのいくつかは同じテイクの上にオーバー・ダビングしたものである。このアコーディオンもそのひとつで、弾いているのは「ウェンドの時代」ゆかりのCamille Ferruzi (サイト内「Rumba Congo」参照) 。このように、ありとあらゆる不協和と不条理、リスナーの意表をついたとんでもない展開や組み合わせこそ、実験的なロックでなくてなんであろう。しかも、彼等はキンシャサでのショウ・ビジネスに於いて、この時期の長きに亘って大成功を収めているのだ。

 このようにStukasとひとことでいってもさまざまなスタイルの音楽があるが、惜しむらくはこの時期のものは録音状態の悪い音源が多く、一度聴いたくらいでは、その良さや華やかさが感じられにくいという点である。その点を充分汲み取って頂いてこれを聴くならば、Stukasというバンドのダイナミズムに、改めて驚かされることであろう。彼等がもう10年遅く出てくれていたら、もっと良い状態で録音出来たのに・・・と、返す返すも悔やまれるほどの出来である。

 

Lita Bembo "Nkolo Kwanga" & Stukas Orchestra
(CD, Ngoyarto NG015)

Gida {Judas} (Lita Bembo)
Losikiya {autre version} (Lita Bembo)
Sono (Lita Bembo)
Esta {Esta Bibisha} (Lita Bembo)
Awuti Poto (Lita Bembo)
Miss Jacquina (Lita Bembo)
Simplicite (Lita Bembo)
Tembe eluti mabe {Le Conflit des Generations}
 (Lita Bembo)
Comprehension (Lita Bembo)
Atout Coeur (Lita Bembo)

 更にその続きであり、1980年前後のStukasのLita Bembo編。CDジャケットに大きくあしらわれた「VISA 80」のマークは、T.P.O.K. JazzのリーダーであったFrancoが、ヨーロッパへのザイール音楽の輸出ビジネスの拠点として、ブリュッセルに設立した「VISA 1980」レーベルの名前である。このレーベルから出たものは録音状態も良く、Francoの薮睨みが効いて内容も吟味されているので、他のアーティストの作品も良いものが多い。ただ、このCDに収録された全ての曲がそこから出ていたかどうかには疑問がある。

 さて内容である。ひとことでいうならば、脂の乗り切ったStukasのヒット曲集。1曲目「Gida」は、1981年に発売されたLP (FRAN008) の表記では「Judas」となっており、歌詞の内容からして、新約聖書に現れるキリストを欺いた弟子「ユダ」のことであるので、「Judas」が正しい。ちなみにフランス語では、このように曲の内容を差し置いて字句の解釈に拘泥することを、「judaique」という。「悪魔のサイレン」全開、歌詞・演奏・勢い、どれをとっても天下一品、まさにStukasの看板的名曲である。このバージョンが彼等の定番となる。リード・ギタリストDodoliの弾くソロは、後に彼が移籍するVictoria EleisonやAnti Chocでも使い回しされている。2曲目の「Lossikiya」は、前の前のCD (Ngoyarto NG043) にオリジナル・バージョンがあり、構成を殆ど変えずに録り直している。前者は、1970年代らしい鄙びた明るさがあるが、こちらは電気機関車のように重く、甲乙つけがたい。次の3曲目「Sono」は、下のLP (CID783) からの唯一の収録である。突然のコード変化とともにワープするかのようなセベンが素晴らしい。「Esta」は、ひとつ前のCD (Ngoyarto NG044) で「Sta」、1978年発売のLP (Sonodisc360131)では「Esta Bibisha」と表記されている曲と重複する。この曲と、彼等の代表的名曲のひとつである次の「Awuti Poto」は1978年に発売されている。「Miss Jaquina」は、テーマの歌メロがStukasの口癖のように繰り返し使われるほど印象的なもので、これも隠れた名曲、「Miss」というタイトルで1982年に発売されている。

 「Tembe eluti mabe」は、ブロンドのロング・ヘアの白人女性と迎えた朝のベッドで、物思いに沈むLita Bemboの写真をあしらった、ショッキングなジャケットで発売されたソロ・アルバム、「Conflit」のタイトル・チューン。歌い出しに「... tembe eluti mabe ...」という文句が出てくるのでそれをタイトルにし直したものか、以下の3曲も厳密にはStukas名義ではなく、渡欧してからのLita Bemboが、セッション・ミュージシャンを集めて1986年から1987年に発表したソロ・アルバムからのカットであり、まあ聞かんでもよろしい。インナー・スリーブに、この編集盤はLita BemboとNgoyartoによってなされたと書いてあるので、まあ彼の意向が働いとんでしょうな。この3曲以外の内容はお奨め出来る。

 

Les Editions Nationales presente Gaby Lita Bembo & L'orchestre Stukas: C'est la Vie
(CD, Editions Nationales/ Clovis Productions EN002)

Wangata (Suke Bola)
C'est la Vie (Suke Bola)
Kaninda (Mbuta Nseka)
Valaliema (Suke Bola)
Mandibadie (Kisola Nzita)
Magina (Mama Yes)
Deception Djuma (Fimbo Jerry)
Betu Tumba (Dodod Ngomu/ Minzoto Wella Wella)

 上のCDのジャケット写真を左右ひっくり返しただけの、典型的なコンゴ人仕事と笑う事なかれ、リリースされたレーベルは異なるけれども、編集方針としては同時期のStukasのうち、Lita Bemboの曲以外を編んだものとして、立派に筋は通ってる。私は個人的にはこっちの方が好きですな。アイロニックなLita Bemboの鏡像をジャケットに持ってくるあたり、さらにアイロニックでええやん。カリスマ・ボスの支配下で鍛えられた部下たちが、ボスの居ぬ間にやらかすことほど面白いものはなくて、特に初めの2曲、「Wangata」と「C'est la vie」は、後にLPにも収録されたStukasを代表する1978年の大ヒット曲であるが、Lita Bemboとは全く切り口の異なるSuke Bolaの曲相、しかしそこはあくまでStukasの演奏である。しかし3曲目「Kaninda」以降は、がらっと世界が変わる。まさにルンバ・リンガラの王道そのもの。ちなみに、コールされるダンスは、1984年頃のヒット・ダンス「Osaka Dynastie」で、これがまるまるCDで聞かれるのはこの曲だけではなかろうか。大阪人にとっては嬉しいかけ声である。次の「Valaliema」では、なんとStukasのバックにホーンが入る。まろやかに歌い上げられる王道のルンバ・リンガラの世界から一転して、フェイザーを歪ませながらなだれ込む急降下爆撃機の応酬・・・もはや言葉もない。5曲目「Mandibadie」は、再びLPにも収録されたStukasを代表する1978年の大ヒット曲、出だしから突っ走るスピード感と、エコーとフェイザーで厚みを増すギター・ソロが光り輝き陶酔を誘う。6曲目も全速でぶっ放したあと、どこかVeritable Victoria Principalを彷彿とさせる「Deception Djuma」はマスター・テープが手に入らなかったのか、ブチブチのシングル盤からCDに起こしてしまう典型的なコンゴ人仕事、おまけに最後の1曲は全然違うMinzoto Wella Wellaの曲を持ってくるあたりがご愛嬌。笑ってやってください。最初の2曲が出色に良い。

 

Lita-Bembo & Le Stukas Boys, Casques Bleus & Papa Wemba (CD, Grace Music Ref013)

Le Chemin de mon Village (Lita Bembo)
Wangata (Lita Bembo {Suke Bola})
Wilson elongi lokola Sanza (Lita Bembo)
Tumba Leki ya Vera (Lita Bembo)
Je t'en prie Omanga (Lengi Lenga/ Casques Bleus)
Les Casques Bleus (Lengi Lenga/ Casques Bleus)
Fleur Betoko (Papa Wemba/ Viva la Musica)

 さて、コンゴ人仕事を悪くいうのは心が痛むのであるが、こういう実例を見せられると、やはりひとこと言いたくなる。事情のわからない人には、このCDのどれが出演者でどれがタイトルなのか、さっぱりわかるまい。これは、1-4曲目がLita Bembo率いるStukasの曲、5,6曲目がTeddy Sukami率いるCasques BleusというZaiko Langa Langaの裏ユニットに於けるLengi Lengaの曲、最後がPapa WembaのViva la Musicaの曲という、編集方針も何もないごちゃまぜのCDである。あえて共通点をいえば、すべてFrancoの「VISA 1980」からみの音源だということくらいだが、そんなのリスナーには関係ないもんね。

 Stukasについてのみ言及する。収録されている4曲は、全て復刻されていない。特に2曲目の「Wangata」は、Suke Bolaの曲はシングルで入って来ていたが、Lita Bemboにも同タイトルの曲があったとは全く知らなかった。コールされるダンス「Motor Retro」や、サイレンの入り方、ギターのフレーズから類推するに1979年頃の曲であろう。希少な音源を復刻してくれたことには敬意を表するが、スリーブは裏白のピラ1枚で何のデータもつけてないし、コンゴ人仕事を悪くいうのは心が痛むのであるが、やっぱりちょっとね。ちなみに、Casques Bleusの2曲は、1970年代末期のまったりしたZaikoとは一風違った男臭いルンバ・リンガラの佳曲、Vivaの「Fleur Betoko」は、ちゃんとした復刻CD「L'orchestre Viva la Musica: Papa Wemba & Kester Emeneya; 1977/ 1978/ 1980 au Village Molokai (CD, Ngoyarto NG069)」があるし、ここのは擦り傷入りのLP起こしなので、まあ無理してまで買わんでよろしい。ほかに聴くべきものは一杯ある。

 以上が、2007年現在、CDで復刻されているStukasの音源の全てである。総括すると、Stukasに関して言えば、CDには良い曲を選んであると思う。ただ、Lita Bembo、Suke Bola、Kisola Nzitaなど主要メンバーの作品に偏っていることを指摘しておきたい。それ以外の曲にも大変良いものがあるし、それらは一風変わった彼等の側面を見せてくれて、非常に味わい深い。が、多くはシングルで出ただけで消えているのが残念である。さて以下にLPを紹介するが、結論から言うと、上から4枚は捜すべきだが、それ以下は入手困難である上、内容もそれほど良くない。満足出来ない人は、そのエネルギーと予算を持って、シングル盤の茫漠たる広大な砂漠へ分け入られるがよい。大変やけどね・・・

 

L'afrique Danse: Orchestre Stukas
(LP, Sonodisc 360.130, 1979)

Libota (Kisola Nzita)
Mandibadie (Kisola Nzita)

Bomatracien (Kisola Nzita)
Na-regretter (Kisola Nzita)

L'afrique Danse: Orchestre Stukas
(LP, Sonodisc 360.131, 1979)

C'est la Vie (Suke Bola)
Esta Bibisha (Lita Bembo)

Colombo (Lita Bembo)
Awuti Poto (Lita Bembo)

 以下、手短かにStukasを収録したLPを紹介して行こう。上の2枚はほぼ同時に出た。我々の間でStukasのLPというと、まずはこれだった。初めて聴いた時、歌が終わったらいきなりテンポ・アップしてセベン全開、つなぎも何もない直球に奇想天外な展開・・・「なんぢゃこのバンド、めっちゃおもろいやんけ」と感じたのを思い出す懐かしいLPである。とくに(Sonodisc 360.130) の方は、全てKisola Nzitaの曲であり、最初に聴いただけにStukasといえば彼の曲調の印象が強い。いずれもアフリカン・パンクの誉れに恥じない激しさとロックっぽさはダントツである。

 

Disco Stock presente Lita Bembo et Les Stukas du Zaire (LP, Don Dass, Vol. 3 DS7948/ AC10018, )

Kibata (Kisola Nzita)
Moseka (Kisola Nzita)

Mama na Cadet (Gina wa Gina)
Bizaleli (Kisola Nzita)

 このLPは、日本盤でBlues Interactionsから発売された。原盤シングルは、キンシャサのDon Dassだが、LP化されるにあたりCote d'IvoireのAbidjanに本拠を置くDisco Stock社からDon Dassレーベルとしてシリーズ物でザイール音楽が発売されていたことがある。ちなみにVol. 1は後期「T.P.O.K. Jazz」の若手歌手Djo Mpoyのソロ・アルバム、Vol. 4は、我々の度肝を抜いた「Viva la Musica」の「Beloti」である。当時のBlues Interactionsでは、アフリカ音楽を日本に紹介する一環として、Abidjanのレーベルのものを多くディストリビュートして、日本盤として発売していた。上のレコード番号で「AC100**」で始まる一連のシリーズは、今となっては貴重で優れた音源が多い。レーベルは「P-Vine」である。

 さて内容であるが、これはもう4曲圧巻の一言。息もつかせぬ勢い全開でぶっ飛ばすStukasの世界を満喫出来る。若干歪み気味であるが音質も良く、見つけ次第買うべし。まずは1曲目、「Kibata」であるが、これは上の上のLP (Sonodisc 360.130) の1曲目「Libota」と全く同一曲。おそらく1978年。「Moseka」と「Mama na Cadet」は、" Toyo Motors Retro"がアニメイトされるので、多分1979年、ソロ・ギタリストが変わり、Eugenier Ekanga (ううむ・・・コンドームの優等生?) の「悪魔のサイレン」が鳴り響く。ちなみに作曲者Gina wa Ginaは、後にZaiko Langa Langaに加入して独自の渋みある歌声を聞かせる歌手であるが、ここではまだその味わいは感じられない。4曲目の「Bizaleli」は、bizarrerieすなわち「奇怪さ」を表すフランス語を音写したリンガラ語で、文字通りイントロから歌・カダンス・セベンとそこからの展開がまさに奇想天外な迷曲。ダンスは"Rapo Crapeau"がコールされているので、1981年以後の作品か。いずれにせよ、1曲を除いてKisola作曲、上のLP (Sonodisc 360.130) に次いで日本に出回ったLPで、当時の認識としてはStukas = Kisolaだったことを思い出す。まだ中古レコードで時々みるので、冥土の土産でも家宝にするでも良いから、見つけ次第迷わず買うべし。

 

Lita Bembo et L'orchestre Stukas Mombombo: Nkolo Kwanga (LP, CID783)

Dina (Lita Bembo)
Ezida (Lita Bembo)

Sono (Lita Bembo)
Mobali ya Bato (Lita Bembo)

 LPジャケットに一切のデータがないので発売年や経緯などはわからないが、おそらく1981年頃の、キンシャサ録音としては最終期のシングルを集めたものか、初めからアルバムとして発売されていたのかもしれぬ。B面2曲目の「Sono」のみ上のCD (Ngoyarto NG015) に収録されている。基本的にはその世界。Dodoliの踊るようなギターにフェイザーをかけまくり、これでもかこれでもかと揺れ動くキラキラリンガラの世界。A面1曲目「Dina」以外のダンスは、全て"Rapo Crapeau"がコールされている。A面2曲目「Ezida」のソロは、おそらくBongo Wende。まだ不良在庫や中古品として見かけることがある。1978年当時の勢いを保ったまま演奏力も表現力も向上し、鼻息と汗をものともせず疾走するStukasを満喫出来るのはこれが最後。まだ時々中古で見かける。見つけたら迷わず買うべし。

 

Franco presente Lita Bembo Kolo Kwanga et L'orchestre Stukas danse Rapo Crapo '81 (LP, VISA1980 FRAN008, 1980)

Judas (Lita Bembo)
Bakati yo Kwanga (Lita Bembo)

Selia Loza (Lita Bembo)
S.O.S. Cha Cha (Lita Bembo)

 ドラマチックなイントロと「悪魔のサイレン」で始まる1980年代Stukasの代表曲「Judas」を含む、Franco提供の一連のヨーロッパ向けザイール音楽シリーズの一環として発売されたもの。音質はそれまでの音源に比べて格段に良い。しかしヨーロッパは寒いのか、いまいち汗と唾の飛び散り方がおとなしいように思う。曲調、展開、歌い回し、演奏の醍醐味は、どれをとってもStukasだし、全曲Lita Bemboの体臭がムンムンする。しかし、音と音の間の生気が足りずクールなのだ。良く言えば円熟。このLPはほぼ入手不可能と思われるが、この時期の録音を再収録したCD (Ngoyarto NG015) も、発売元の倒産で流通在庫と中古品のみ。ちなみにそのCDには、このLPからは「Judas {Gida} 」のみ再収録されている。

 

Franco presente Lita Bembo Nkolo Kwanga
(LP, VISA1980 Pass02, 1982)

Elalie (Lita Bembo)
Miss {Miss Jaquina} (Lita Bembo)

Chic Mondo (Lita Bembo)
Isiro (Lita Bembo)

 上のLPとは別レーベルだが、同じFranco提供と思うからか、音の処理やバランスがどうしてもT.P.O.K. Jazzに聞こえる。スタジオや機材やエンジニアが同じだからだろうか。音の感じは上のLPとほぼ同じで、全曲Lita Bembo。雑音が混じっていようがクリップしていようがおかまいなしに突き進んでくるStukasというより、それらがきちんと整理されて行儀よくコントロールされた「結果」を聞かされている感じがしないでもない。A面2曲目「Miss {Miss Jaquina} 」が、CD (Ngoyarto NG015) に再収録されているから、それを見つけられれば特にこのLPが必要とは思われない。僕は思い入れがあるから、好きなんは好きやし、ええのんはええのんよ・・・例えば「Isiro」に於けるEkangaのソロは、コンゴのBandundu州北部のMai Ndombe周辺の民謡に出てくるフレーズで、これは後に「Rumba Ray」のFistonというギタリストがよく使ってて、彼は別名を「Fils a Papa」といい、実はStukasでもその名がコールされてるから、ひょっとしたら・・・このあと結成される「Rumba Ray」には、Stukasの若手がごっそり流れ込んでるし、フランチャイズ・ゾーンもMatete地区で同じだし等々・・・まあ一般のリスナーには、何の関係もないことだけど。

 

L'orchestre Stukas 83 de Lita Bembo
(LP, Benson-Record BEN 004, 1983)

Jeune Wangata (Suke Bola)
Kaba Santer (Mboko)

Cherie-Konga (Makolin)
Yefole (Suke Bola)

 1982年、Lita BemboはLomingo AlidaにStukasのリーダーシップを委ね、本格的にBruxellesに腰を落ち着けるべく渡欧する。曲の中で「Lita Bembo auti mpoto (洋行帰りのリタ・ベンボ) 」と何度もコールされているように、彼はその数年前から頻繁に渡欧し、チャンスをうかがっていた。Francoとの関係によりLPを2枚リリースしたのもその成果だったが、今度は、正式にT.P.O.K. JazzのエンジニアをするようFrancoから要請を受けたのである。時は「Mario」大ヒットの時期であった。このアルバムは、その際キンシャサに残されたメンバーたちで録音されており、Lita Bemboは参加していない。タイトルを良くみると、なるほど「リタ・ベンボのストゥーカス83」とある。さて内容は、前作までのようにヨーロッパ的息苦しさと親分風にビビる必要のなくなった分、伸び伸びとした演奏である。StukasでありながらStukasでない。Lita Bemboの曲は、往々にしてその過激さが限界まで増幅され、曲を彼の色に塗りつぶしてしまう嫌いがあるが、このLPに収められた曲たちは、その過激さを支えた頑丈なバック陣が、自由に遊んでみましたという気軽さ、ポップさ、中庸の持つ醍醐味が感じられる。リンガラ・ポップスの持つ過激さと派手さ、華やかさと親しみやすさが、Lita Bemboの不在によって、図らずも実現されてしまった感がある。特に、新規に加入したMakolinの高い声をフィーチャーした「Cherie-Konga」や、若手ギタリストのNdengasのリードをフィーチャーした「Yefole」など、聞き所の多い作品であるが、ワン・プレスで廃盤になっており、日本にもごく少量入荷しただけの、頗る付きの稀少盤。CDにも再収録されていない。ダンスは"La Bionda-Bionda"。

 

Lita Bembo Libeki & Stukas Ba Kolo Kuanga
(LP, Rhymes et Musique REM130, 1984?)

Doudou (Lita Bembo)
Lossikiya {autre version} (Lita Bembo)

Kerera (Lita Bembo)
Cicatrice (Lita Bembo)
Muasi {autre version} (Lita Bembo)
Primus (Lita Bembo)

 LPの表示では、A面3曲B面3曲になっているが、実際には上のように収録されている。聞き所はA面のみ、あえていうなら、録り直した「Lossikiya {autre version} 」のみであるので、その曲が収録されているCD (Ngoyarto NG015) を聴かれれば十分かと思う。それまでの録音を寄せ集めてLP化したもので、ジャケットの絵は、なんとLita BemboがPapa Wemba以下Viva la Musicaのメンバーをバックに歌っている。売るためにやったんでしょうけど、事実無根ですよ念のため・・・。で、末期Stukasのメンバー移動について聞き知っているところを書くならば、1982年に、「Viva la Musica」から「Victoria Eleison」が分離した時にMakola Makolinがこれに参加、翌年、その「Victoria Eleison」から分離した「Veritable Victoria Principal」には、Fimbo JerryとDodoliが参加している。それに関わっていたメンバーのうち、Bandundu州出身のFale・Fiston・Ndengasは、いずれも1986年に「Viva la Musica」から歌手のMaray Marayを中心に分離独立した「Rumba Ray」の結成に参加している。一方、Stukasは1986年にLomingo Alidaの「T.P.O.K. Jazz」への移籍を機に解散したことになっているが、私が1989年にキンシャサを訪れた際、「Rumba Ray」が本拠地としていたMatete地区に、「Rumba Ray」所属のギタリストNdengasが、「Stukas Mangenda」を率いて活動していた。これは、このページの最後に紹介するコンピレーション (CD, Crown Records ZL-134, 1989)で紹介された「Stunning Mangenda」と表裏一体のオルケストルであって、その革新性はのちの「Wenge Musica」の結成に一役買うことになる。彼等の練習に行ったことがあるが、なんと二軍三軍を擁する大所帯で一種の道場のような厳しさがあり、かつてのStukasの下部組織「Stukas ABC」・「Stukas Boys」の名がそのまま継承されて、それぞれのユニットを形成していた。奥深いものである。この他にも、Lita Bembo名義やStukasのアルバムが複数あるが、いずれも内容的にはお奨め出来ない (たぶん) 。

 


Stukas private discography A to Z

 Stukasには、LPにもCDにも収録されず、キンシャサでローカルなヒットを放っただけで消えて行った作品が多くある。特にサポート・メンバーや客演者の提供した曲は、Lita Bemboのものとは全く曲調が異なり、これが同じStukasかと驚かされるものも多い。ここでは私の所有する音源を曲順アルファベットに並べて、それらがLP、CDにどう再収録されて行ったかを追ってみることにした。表中「45T」は原盤シングルの番号、「33T」はそれを再収録したものを含めたLPアルバムの番号である。年代は「?」をつけたものは、各資料を動員しての推定、人名の表記については混乱を避けるために統一してある。またタイトルで { } で囲まれたものは、複数の表記のあるものを示している。「*」印は、かつて持っていたが紛失したもの。「-」印はコピーさせてもらった音源である。これら以外の曲や、空白を埋める情報をお持ちの方がおられましたら、ご一報いただければ幸いです。左の写真は、「Stukas: Hit Selection 81」というライブ仕立ての名演(Lomingo Alida, 45T. Alamoule AL143)。表記は1971年とあるが、タイトルや演奏内容からして1981年作と思われる。

 

Title Compositeur ann. 45T 33T CD
Awuti Poto Lita Bembo 1978? Sonodisc360131 NG015
Azanga Lita Bembo 1969-1974 NG043
Bakati yo Kwanga Lita Bambo 1981 FRAN008
Bebe ingende Lomingo Alida 1969-1974 NG043
Belela* Suke Bola 1979 NAT22
Betu Tumba Dobo Ngomu 1978? EN002CD
Biboma boma Suke Bola 1969-1974 CV16 NG043
Bienvenue Ema* Lita Bembo 1976 SC32
Bizaleli Kisola Nzita 1982? DS7948/ AC10018
Boketsu-
Bomatracien Kisola Nzita 1978 Nat16 Sonodisc360130
C'est la vie Suke Bola 1978? Sonodisc360131 EN002CD
Carte Rouge* Lomingo Alida 1983 NAT62
Cherie Fatumata-
Cherie Konga Makolin 1983 Ben004
Chic Mondo Lita Bambo 1982 Pass02
Cicatrice Lita Bembo 1984 REM130
Colombo Lita Bembo 1978? Sonodisc360131
Confiance Tuabi Mbuta Nseka 1982 LDF43
Dada Suke Bola 1976 NAT13 NG044
Deception Djuma Fimbo Jerry 1978? EN002CD
Dina Lita Bembo 1981? CID783
DjelaMama Niangi-
Djemelasi Kaka-
Djoboke Kisola Nzita 1969-1974 NG043
Doudou Lita Bembo 1984 REM130
Dynastie Lita Bembo 1983 LB04
Ekonda Sacade Lita Bembo 1974 CV05
Ekonda Sacade {autre v.} Lita Bembo 1969-1974 NG043
Elalie Lita Bambo 1982 Pass02
Engaie-
Esta {Esta Bibisha,Sta} Lita Bembo 1978? Sonodisc360131 NG015, NG044
Ezida Lita Bembo 1981? CID783
Gida {Judas, Zonga Zida} Lita Bembo 1981 NG015
Gida accordeon (av. Ferruzzi) Lita Bembo 1974-1979 NG044
Hit Parade-
Hit Selection 81 Lomingo Alida 1971 (81?) AL143
Idee Kono {Idee Econo} Lomingo Alida 1977 NAT15 Sonodisc360112 Retro18CD
Isiro Lita Bambo 1982 Pass02
Jeune Wangata Suke Bola 1983 Ben004
Judas {Gida, Zonga Zida} Lita Bambo 1981 FRAN008
Kaba Santer Mboko 1983 Ben004
Kanda ya Mobembo-
Kaninda Mbuta Nseka 1978? EN002CD
Kerera Lita Bembo 1984 REM130
Kibata {Libota} Kisola Nzita 1979? DS7948/ AC10018
La Fievre du Jeudi Soir-
La Samba
Le Chemin de mon Village Lita Bembo 1978? REF013
Libota {Kibata} Kisola Nzita 1979? Sonodisc360130
Limbisa Ngai-
Lobelia Suke Bola 1978 DV27 Retro18CD
Lopata Kisola Nzita 1974-1979 Sonodisc360122 NG044
Losikiya {autre version} Lita Bembo 1984 REM130 NG015
Lossikiya {v. originale} Lita Bembo 1969-1974 NG043
Ma Golgota* Suke Bola 1978 NAT17
Mabita
Madimbadie Kisola Nzita 1978 Nat20 Sonodisc360130 EN002CD
Magina Mama Yes 1978? EN002CD
Mama na Cadet Gina wa Gina 1982? DS7948/ AC10018
Mami Rita Ndengas 1984 Nat71
Manequin Suke Bola 1985 Nat78
Mayimba Lita Bembo 1969-1974 NG043
Miss {Miss Jacquina} Lita Bembo 1982 PS02 Pass02 NG015
Mobali ya Bato Lita Bembo 1981? CID783
Mombongo-
Moseka Kisola Nzita 1982? DS7948/ AC10018
Moseka Mbunza Lita Bembo 1974-1979 NG044
Muasi {autre version} Lita Bembo 1984 REM130
Muasi {Style Jazz} Lita Bembo 1969-1974 NG043
Munanga* Kisola Nzita 1976 FL02
Mwana Mswahili Kisola Nzita 1982 LS01
Mwana ya Mama -
Na-regretter Kisola Nzita 1979? Sonodisc360130
Nale okendeke Lita Bembo 1969-1974 NG043
Nanalili-
Ndoyi ya Papa Mboko 1982 PA32
Noel Bonane Mbuta Nseka 1982 IM18
Nostalgie Lita Bembo 1976 MR41 Sonodisc360112 NG044
Odeyo Lita Bembo 1974? KR15 Retro18CD
Oli Lita Bembo 1974-1979 MR40 NG044
Papi PablitoIsole Kerenia- Lomingo Alida 1976
Presidents Lita Bembo 1978 MR48 Retro18CD
Primus Lita Bembo 1984 REM130
Rasta Monga Maitre Sampinu 1984 INF001
S.O.S. Cha Cha Lita Bambo 1981 FRAN008
Safro Mara* Kisola Nzita ? KR16
Samba Lita Bembo 1983? Retro18CD
Scania* Lita Bembo 1975 TCH03
Selia Loza Lita Bambo 1981 FRAN008
Serment-
Simplicite Lita Bembo NG015
Sisika Myre Timambi 1969-1974 NG043
Sono Lita Bembo 1981? CID783 NG015
Souci Lita Bembo 1971 NG043
Souci Fetish* Lita Bembo 1971-1972 WK11
Sta {Esta, Esta Bibisha} Lita Bembo 1978? NG044, NG015
Tentation Lomingo Alida 1983 Nat64
Toto Seya Lita Bembo 1978 CV1-60 Retro18CD
Tumba leki ya Vera Lita Bembo 1978? REF013
Valaliema Suke Bola 1978? EN002CD
Valalim
Vie Privee Lita Bembo 1979 Nat32
Wangata Suke Bola 1978 Nat19 Sonodisc360122 EN002CD
Wangata Lita Bembo 1979? REF013
Wenge* Mboko 1984 PA42REF013
Wilson elongi lokola Sanza Lita Bembo 1978? REF013
Yaka Totokana-
Yawesa
Yefole Suke Bola 1983 Ben004
You You A.B.C.-
Zonga Zida 1950, 2e. ver. Lita Bembo 1974-1979 LB01

 資料収集には福丸裕明氏、冨依洋茂氏、中山義雄氏、BCBG氏、Bonobo氏にご協力いただきました。この場を借りて謝意を表します。

 


homepage> music> 世界のエエ音楽