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 らっきょうを漬ける

 梅干しと並んで、関西の夏の風物詩に「らっきょう」というものがある。これは全国的に有名だと思っていたのだが、関東から北の方の人にはあまり馴染みがないらしい。そんなわけで、ここではらっきょうの全国的な産地である鳥取県在住の、とてもセンチメンタルで奥ゆかしい出戻り娘から寝物語に教わった、彼の地方に古くから伝わる伝統的なレシピによる、正しいらっきょうの漬け方をご紹介しようと思う。

 らっきょうはタマネギやにんにくの仲間なので、精力の衰える夏場には強精剤として威力を発揮する。少々臭いが、これを食ったのと食わんのとでは、・・・に雲泥の違いがある。しかも、自分で手づから漬けたものは、スーパーで売っているようなべたべたに甘ったるい「ハナラッキョ」などとは比べものにならぬほどにうまい。元来らっきょうはあくが強く、苦みばしったものなので、それを抜く抜き加減や、漬ける塩加減を微妙に調節することによって、ひとたび食えば病みつきになるような、絶妙の味を醸し出すことが出来るのである。

 うまいらっきょうを食いたければ、是非とも塩漬けされていない「洗いらっきょう」というものを手に入れるべきである。表示を良く確かめるべし。ものによっては塩で下漬けされているものもあり、これをさらに塩漬けすると、なかなか感慨深い辛さに仕上がる。こだわる向きには、土のついた皮付のものもよい。ただし、薄皮を剥くのにキロあたり1時間程度かかる上、手についた臭いは数日取れない。

 まずは、らっきょうをざっと洗ってざるにあげておく。らっきょう1キロに対して、水700ccに塩150gを溶かしたものを用意し、かめなどに入れてらっきょうを塩漬けにする。これを冷暗所に保管し、約2週間おく。ときどきかめを開けてみると、次第に泡立ってくるが、気にせず清潔な手で上下を混ぜる。2週間ほど経って、らっきょうを1粒食ってみて歯ごたえがよくなっていたら、ざるにあけ、流水に24時間程度さらして塩を抜く。私は塩味の強めのらっきょうが好きなので、ほぼ半日で切り上げるが、これは好みで加減する。

 程良く塩が抜けてきたら、漬け汁を用意する。らっきょう1キロ当たり、酢350cc、砂糖200g、水150cc、好みで赤とうがらしの輪切りを少々。酢は、寿司酢など生で使える純粋なものがよく、まろやかなものの方が口当たりがよい。砂糖はザラメや氷砂糖であれば、この1.5倍程度、黒糖やサトウキビ糖であれば、1.2倍程度が適当。黒糖のらっきょうは結構うまかった。今年はオーソドックスに粗糖でいってみた。水と砂糖を鍋に入れてひと煮立ちさせ、砂糖を完全に溶かす。これが冷えてから酢を加え、漬け汁とする。

 大鍋に水を張って沸騰させ、塩抜きを終えたらっきょうを放り込んで煮沸する。これは皮を引き締めるのと消毒をかねているのだが、ほんの一瞬、長くて10秒程度でよい。すぐにざるに空けて水を切りつつよく冷ます。

 保存容器を煮沸消毒して乾かし、らっきょうと漬け汁を合わせて入れ、好みで赤とうがらしを加える。これで出来上がり。あとは冷蔵庫での保存が望ましい。うまみが出てくるのは、少なくとも1ヵ月後からで、3ヵ月目頃が最もうまい。バリエーションとしては、モミジソを加えたり、ユズの皮を乾かしたものを入れてもよく合う。これを1日5粒程度めしと一緒に食えば、・・・。


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