Ariano Folkfestival

 南イタリアのCampania州、Napoliを東へ約100kmばかり行ったところに、Ariano Irpinoという町があって、毎年夏に「Ariano Folkfestival」という町を挙げての催し物が開かれている。私はひょんな事から、2005年にそのフェスティバルを訪れ、大変感銘を受けたのでここに敬意を表すべく、その概要と、日本人には余り馴染みのないこの町について、少し紹介したいと思う。Ariano Irpinoの街とアクセスについてはここを参照。

 パンフレットによると、フェスティバルは1996年に始まり、2005年で10回を数える。開催期間は2001年までは3日間だったが、それ以後4日、5日と増え、2003年からは3年連続で6日間となっている。イタリアで行われているフェスティバルだから、当然イタリアのアーティストが多く出演する。私はこれらの名前をほとんど知らないが、イタリア音楽ファンなら、きっとよくご存知の名前が散見されるに違いない。バルカン半島や東欧のジプシーを思わせる名前や、南米移民、アフリカ、イスラム圏からの出演もあるようだ。特に2005年は、ポルトガル語圏アフリカのCabo VerdeとAngolaから3つのグループが出演した。私のお目当てはこれだった。さらに近隣諸国からも何組か出たようであり、年々内容が充実して来ている事が伺える。Folkfestivalというタイトルの通り、出演者の演奏ジャンルは、ポピュラー音楽から伝統音楽、フォーク、トラッド、クラシックの中でも土着的なもの、民俗音楽、ワールド・ミュージックあたりと思えば良い。ノンジャンル的なフェスティバルとしては独自路線で、他に余り例を見ない面白いものだと思う。

 Ariano Irpinoという町は丘の上の城郭都市である。催しはその城内の各所で行われる。2005年の開催期間は8月の16-21の6日間であった。毎日夕方から映画や芸術祭、日没からストリート・パフォーマンスも出て、夜半過ぎまで野外コンサート、さらに場所をクラブに移して朝までDJという一大イベントである。催し物への参加は全て無料。しかし、城内に宿泊施設はない。このことが、このフェスティバルを楽しむ観光客にとって非常に残念なところである。最も近いホテルでさえ歩いて1時間はかかるので、朝まで飲んだくれるか、なんらかの方法で車を確保する必要がある。また、驚いた事に城内のレストランは昼は営業していないので、昼食をとるにも町を出る必要がある。ボランティアに支えられた街フェスなので、スタッフと一緒にステージ周りなどの仕事を手伝えば、ランチにありつけるかも知れない。夜は屋台が出たり、住民が玄関先にテーブルを出して、誰彼かまわず客を招待して楽しんでいる。もちろんレストランも営業している。Ariano Irpinoへ公共交通機関で来るのは少し困難であるので、一般向きにはレンタカーを借りて昼間は近隣を観光し、夕刻に訪れてフェスティバルを楽しまれるのが良い。動員客数は何万人にもなるが、ほとんどの人が車で来て、宿泊せずに帰るようである。

コンサートのメイン会場「Folkstage」

 上が、2005年のフェスティバル中の街の概略図である。地図の左手が、NapoliやAvellino方面から城郭内に入る旧道、上の写真左手に見えている坂道である。「1 Folkstage」とある場所が、メインのコンサート会場、そこから少し上がって、Cattedraleの広場にも「2 Piazzastage」がある。広場に向かって右手の路地を入って行くと、そこは一種の観光ルート「7、3、8」で、土産物屋やギャラリーが多く、昼間は映画祭や芸術祭、大道芸があったりする。そのまままっすぐ行くと、大きな広場「4」に出る。その奥は警察署であり、その裏手が「5キャンプ場」で、レンタカーでやって来て車で寝泊まりしている若者が多数あった。 

 先にも触れたように、フェスティバル中は、ほとんど町を挙げてのどんちゃん騒ぎであり、「南イタリアで最もクレイジーなフェスティバル」といわれている。大掛かりな町おこし事業とはいえ、まだまだ手作りの部分も多く、遠来の客をもてなす心、フェスティバルを楽しみ、盛り上げる機運に満ちている。運営はボランティアの手にゆだねられているので、観客が仕事を手伝って、スタッフと一緒にフェスティバルを楽しむ姿が散見される。町の人もスタッフも大変素朴で親切であり、どうせなら彼等とともに働いて地元の郷土料理を食べながら盛り上がるフェスティバルを楽しんで頂きたい。そうすれば、きっと他では味わえない南イタリアのすてきな夏を満喫できるに違いない。


過去のステージ出演アーティスト


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