初めての稲作の総括


マチガイの連続にも関わらず約6畝で約200kg



 今日は、昼過ぎから私の田んぼで穫れた米と国産みのNPOでのアキタコマチ全体の臼摺である。「臼摺」と言っているが、臼が使われたのは昔の事で、現在は機械化されているので「籾摺」と言った方が適当だろう。昨日の雨天から一夜明けて、今日は気持の良い秋晴れになったので、早朝から洗濯機をフル稼働。布団も干して、さらに昨日手作業で脱穀したものの、力不足で玄米に出来なかった籾を、網戸に広げて天日に干す。午前中に程よく乾いたので、機械で脱穀した籾とともに籾摺に出す。
 籾摺は、国産みの尊の知り合いの米屋さんに頼んでいる。設備の概要については、去年ここ にレポートした。昨日痛いほど経験したように、田植えから脱穀までは、なんとか人力で出来るという感触を得たが、この籾摺ばかりは、よっぽど勉強して段取りつけて、ちゃんとした道具を使わないと、ままごと程度のことしか出来ない事がはっきりした。無動力で農業を自営出来るかどうかの大きな課題だ。また、籾摺機は安いものでも30万程度する。しかもそれには乾燥や選別に関する機材はついていないから、純粋に籾殻と玄米を分けるだけである。その機械の寿命は、ほぼ20年程度。つまり一年で1万5千円。機械を持っているひとに借りると、3反程度の田んぼで穫れる籾を摺るのに1万円程度だから、うちのような規模では割に合わない事になる。しかも、知り合いだから機械を使わせてくれるのであって、実際には、米の収穫期はどこも忙しくて、とても籾摺だけ割り込ませてくれるような余地はない。それに品種の異なる籾を摺ると、米を出荷している農家や米屋は、自分とこの米と混じるので嫌がられる。周囲の田圃がコシヒカリと山田錦であるにも関わらず、うちだけアキタコマチを栽培しているのは、この米屋さんがアキタコマチを栽培しているので、それに合わせてあるという事情もある。このように、脱穀までは、機械さえあれば自前でなんとかなるが、うちのように小規模では、籾摺という最後の最後になって、様々な困難に直面する。栽培の事だけを考えれば、周囲に合わせた方が被害は少ない。しかし、今後も籾摺を頼み続けるとなると、アキタコマチでないと、最後になって途方に暮れる。政権かわってんやったらさあ、このへんもうちょいなんとかならんのかねえ、硬直した農業政策をさあ・・・ 新しく始めようとしても、よっぽど大規模にやらな最後に頓挫するし、だからというて機械を揃えな出来んとなると、借金地獄で首が回らんようになる。僕なんか、全部ただで使わしてもろて、友達に手伝うてもろて、それでも毎日毎日働き続けてんのに、一円も稼ぐゆとりがない。百姓は生かさず殺さず・・・というのが、今にも生きてんのかねえ・・・
 まあそんな事いうててもしゃあない。初めての米作りの成果は、約6畝で約200kg。一反でまあ400kgくらい穫れるのが普通というから83点くらい。初めてにしては上出来や・・・ではない。あの田んぼは国産みの尊が丹誠込めて土作りしてあったのを、そのままタダでそっくり譲り受けたんやから、この結果はむしろ悪いといえる。これから私が管理するとなると、これまで培われてきた土が、私のやり方次第で、多分悪くなる。これを維持するというのは大変な事や。とはいうものの、今回、かなり決定的なマチガイを4回も繰り返してしまったのだが、にもかかわらず83点の成績というのは、これはこれで心に留めておくべきであろう。そのマチガイとは・・・
 1. 除草。農薬を使わない栽培を志したのは良いが、田植え後に生えはじめた雑草を甘く見たために除草が後手後手に回り、雑草の勢いに完全に圧倒され、一時は稲が黄色く枯れはじめる事態になった。田に潜む大蚤に全身を咬まれた事のブランクもあって対処はさらに遅れ、他所事一切無関心無感覚の完全ナチュラル・ハイ状態で毎日除草に没頭し、ひと株ひと株の周りを手で抜くこと合計4巡くりかえして漸く鎮圧した。手で除草する場合、3列跨いでその外側1列ずつの、合計5列ずつ除草するのだが、かがみこんで這いつくばってひと株ずつ抜いていくと、田んぼの端から端まで片道いくのに2時間、そこでだいたい腰が悲鳴を上げるから一日に出来る除草はそれが限界、6畝の田んぼ全体を除草するのに15日、途中にはもちろん雨や用事で出来ない日もあるから都合20日程度かかる。しかし20日も経つと、除草を始めた場所は、始めた頃を大幅に上回る第二波の雑草が生えているので、2巡目はさらに時間と労力がかかる。という具合で4巡を要したのである。今年は梅雨明けが遅く、曇天続きだったのが幸いした。これを炎天下でやっていたなら、とっくに倒れていただろう。また、いくらビニール手袋をしていても、基本的に右手は水の中である。連日の作業で爪がふやけて剥がれそうになる。はがれてしまっては到底作業など出来ぬから、身を守るためにも除草はなるべく軽減すべきである。
 2. 中干し。ぬるま湯に慣れた稲の根を鍛えるために水切りをすること。これによって分蘗に進んだ根が水を求めて地中深くに伸び、稲が丈夫になる。時期は一般に、目標分蘗数 (約20本) の8割程度に分蘖した頃、田植え後30-40日頃から始め、一週間から10日程度落水し、出穂 (アキタコマチの場合7/21頃)の30日前までには終わらせる、とある。ところがこれを私の栽培暦に当てはめてみると、田植えは5/23であったので、本来ならば、落水を6/23-7/03に行なうのだが、その頃既に出穂日の30日前を過ぎている。早稲だから案分するとしても、私が実際に行ったのは、落水が7/06、再入水が穂が出はじめたのを見てあわてて7/18日にやっている。分蘗数は早くから確保されていた。しかし様々な指針があって、そのうちの遅いデータを過信してしまったが為に、結果的に落水が遅れ、しかも時期が長過ぎた。特に、最も水が必要とされる出穂期にまだ干していたのは大きなマチガイであった。これには、除草が後手に回った事が影響している。除草を一区切りつけてから中干ししようとしたが、頼んだ人が来なかったり、他の用事に煩わされたりして日程がずれ込んでしまった。
 3. 開花後の管理。「花が咲いたら風が吹いてもいかん」という格言を花が散ってから知った。花が咲きはじめた頃、まだ私は再入水した田んぼの中で雑草と格闘していた。風が吹いてもいかんといわれるものを、がさがさと田んぼに分け入ったりかがみこんだりしてたんじゃ、そらなんぼなんでもいかんでしょ。おかげで穂先が折れて白く変色するものが出はじめたので、急遽除草を中止し、あとは天に任せる事にした。また、周囲はコシヒカリと山田錦の田んぼが広がっている。つまり中生から晩生の品種である。早稲はうちくらいのものだ。いちはやく実をつける稲穂めがけて、毎年この時期、空が曇るほどの雀の大群の総攻撃を受ける。それを防ぐには、田んぼ全体をネットで覆うしかない。これもまた穂先を傷める。いくら細心の注意を払ったとしても、所詮宙を吊るネットである。稲穂との間が空きすぎると雀が中でホーバリングするし、寄せすぎると雨風の影響を受けやすい。上手く張れたとしても、向こう見ずでアタマのおかしい鳩が網の中に入って大暴れしたりする。また、天敵の来ないのをいい事に、他所の田んぼからカメムシがぎょうさん遊びにくる。そんなこんなで、ネットを張るのに足掛け三日、途中で乱れたのを何度も直しては穂先を傷め、さらに外すのに三日がかりの労力を使って、最後には引っかかった稲穂を沢山引きちぎる羽目になる。これはやめよう。
 4. 稲刈りの時期。出穂後25日程度は特に水を切らしてはいけない。稲刈りはその時期を過ぎて出穂後35-40日、種の充実した籾が、全体の80-90%くらいに黄色く熟した時期とされている。黄色くなっても稲は成熟を続けるので、早く落水するのは禁物であり、稲刈り予定日の5日前くらいに落水すると指針にはあった。仏の顔も三度まで。3回もマチガイを犯したのだから、最後の締めくくりの稲刈りだけは失敗すまいと、ほうぼう調べ尽くし9/05に稲刈りをしたいがいかがなものかと国産みの尊にお伺いを立てると、「よっしゃ」とのことだったので気を良くして、落水日を8/31と定め、それまでは運を天に任せて夏の最後にちょっと遊びにいく計画などを立てておった。ところがここにひとつ目の落とし穴があった。ここらの土地は、有馬川と武庫川が鋭角に合流する内側にあたる。つまり水はけが悪い。尊曰く、「田んぼ乾かすのに2週間はかかるぞ」・・・一方指針に曰く、「作業性を優先するあまり早期落水してはいけません」・・・「せやけど田んぼ入れなんだら稲刈り出来んやんけ」・・・もう好きにせいや、中とって8/23に落水した。稲刈りそのものはうまくいった。しかし籾摺の段になって青米が多い事に気づかされた。早刈りだったのだ。ここにふたつ目の落とし穴があった。つまり、雑草などに栄養を取られた稲は、姿カタチは順調に生育していても、中身が充実するのに思ったより時間がかかるという事だ。通常の計算では、稲刈りは9/11になるはずだった。しかしその日はイベントが控えていた上に天候が悪化しそうだった。しかも、稲の観察により、通常よりも一週間程度生育が早く推移しているように見えた。しかし、実際には遅かったのだ。さいわい、三つ目の落とし穴はなかった。
 ものは考えようである。米作りには、書いて字のごとく88の手間がかかるという。そのうちの4つしか間違わんかったんだから、これはええんちゃうか・・・と。能天気な極楽とんぼの私としては、考えるの苦手やし、これで良しとしとこ。さて、来シーズンは次のようにしようと思う。品種についてはコシヒカリにする。アキタコマチは生育が早すぎて、いろいろ大変であるし、雀の攻撃への対処が大きな手間である。今回は購入苗を使ったが、次は苗代作りに取り組みたい。というのは、購入苗は、機械で植えやすいように幼い状態で出荷されるが、最も移植に適した時期はもっと大きくなってからである。手で植えるのだから、幼苗を使うリスクを負う必要はない。ここでもだいぶポイントを稼げるはずだ。雑草対策については、冬季潅水というテもあるが、一年の中で、田圃が稲作に使われる時期は、わずかに4ヶ月であって、そのために残り8ヶ月も毎日水漏れの心配をせんなんのは私には向かない。そこでとりあえず基本的には同じ方法で稲作するとして、牛糞の投入をやめて、秋の耕転のときに切り藁と籾殻と米糠を投入し、耕転の後レンゲを撒く。これが春先に咲き始める頃に、早めに大量の米糠とともに鋤き込んでいって、苗代作りの頃に代掻きをしてしまう。すると雑草が生きはじめるから、第一波は二度目の代掻きでやっつける。その後に田植え時期が来るので、その前にもう一度代掻きをして第二波も挫いておく。うまくいくかどうかはわからない。しかし、今年よりはマシになるだろう。雑草の出始める時期と田植えを微妙にずらせる事で、少しでも種の蘇生を阻むくらいしか、農薬を使わずに除草する良い方法はないだろう。
 とりあえず200kg、手伝いにきてくれた人たちに分けてあげても、十分食いつなげる収量である。



 

Posted: 木 - 9月 24, 2009 at 02:04 午後          


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