味噌作り・干し芋作り・キムチ薬念醤作り





 丹波の黒豆も、ええ具合に干し上がって来た。ここのところ天候不順で、さらに夜霧朝霧も多く湿度の高い冬の日々であった。こういう冬は百姓泣かせである。まず干して保存すべきものにカビが生える。秋のうちに鋤かなかった田んぼは、いつまでも水を含んで天地返しも出来ない。



 鶴の子大豆と早稲の黒枝豆を使って味噌作り。レシピは、乾燥大豆 : 乾燥麹 : 塩 = 1 : 1 : 0.5。大豆は前夜より三倍以上の容積の水に浸けてふやかし、翌日大鍋で煮る。煮汁を利用するので、あまり水が多いと旨味が少なくなるが、逆に水が少なすぎると十分に柔らかく煮えない。私は大豆の容積の2倍の水で煮ている。指で潰れる程度になったら大豆をザルに取り、煮汁は鍋に残す。分量の塩とよくほぐした乾燥麹を、別のボウルでまんべんなく混ぜ、煮汁の温度が人肌くらいに下がったら、少しずつそれに加える。注意すべきは、麹菌を殺さぬように、充分に温度を下げる事である。麹菌は35〜36゜Cくらいが最も良く、60゜Cを超えると死滅すると言われている。煮汁はしばらくすると乾燥麹に吸い込まれるので、徐々に煮汁を入れて乾燥麹が柔らかくふやける程度にする。指で潰れる程度になったら、煮上がった大豆とまんべんなく混ぜてしばらく置く。しゃもじでつついてネチャネチャする程度が良い。煮汁を入れ過ぎると傷みやすいので、硬いくらいにしておく。実際に使う煮汁は微々たる量である。残りは「豆蔵」にしたり、ご飯に炊き込んだりお澄ましやみそ汁の水替わりに使うと、これなかなかよい出汁になる。なじんだら上のようなミンサーにかける。壷に入れて、味噌に密着するようにラップをかけ、冷暗所で保存して、一ヶ月ごとに天地返しをすると、三ヶ月目位から食べられる。



 干し芋を作る。品種は「タマユタカ」で、粘り気が多く、通常の調理法では甘みが少ない。これを皮のまま蒸す。私の経験上、上のような大きさのもので3時間半程度、4時間以上蒸すと、柔らかくなりすぎて取り出す事さえ難しくなる。包丁の先で皮に切れ目を入れると、そこから綺麗にはがれる。



 上のようなゆで卵カッターのでかい奴を自作して、蒸し上がった芋を上から押し付けてスライスし、それをザルに並べて干物カゴで干すのである。産地の茨城県などでは、冷たい空っ風のおかげで10日ほどで干し上がるそうなのだが、夜霧朝霧の多いここらでは、2週間程度で上手く干し上がるものもあればボロボロのものあり、中にはカビてしまうものもある。



 キムチ用の薬念醤を作る。餅米を少量量っておいて、これと同量の乾燥米麹を用意する。餅米の5杯の水で濃いめの粥を作り、粗熱が除れたら予め量っておいた麹と混ぜてミキサーにかける。ここでも注意すべきは、麹菌を殺さぬように、充分に温度を下げる事である。麹菌は35〜36゜Cくらいが最も良く、60゜Cを超えると死滅すると言われている。滑らかな糊状になったらボウルに開けて、先ずは旨味材料を練り込んで行く。私は、かつをぶしのこれ以上削れなくなった奴を細かく折ってふやかして刻んでおいて、餅米とともに煮てしまう。また、アミエビやイカの塩辛、北海道の連れが送ってくれた珍味の残り、柿の熟れすぎたものや柚子の皮、ショウガとニンニクのおろし、鰯を一ヶ月くらい塩漬けにしたものをミキサーでペースト状にした奴・・・まあときによっていろいろである。それらを混ぜ込んだら、先ずは粗く敷いた乾燥唐辛子を混ぜてゆく。これはもちろん韓国産のものが適度に甘みがあって良いが、日本・中国・ブータン・ウズベク・インド・スリランカ・タンザニア・コンゴ・カメルーン・ベネズエラ・ブラジルなど、どんな国の唐辛子でも、やってみると面白い。この段階で再度ミキサーにかけても良いと思う。十分に混ざったら、韓国産の極細粉末唐辛子を混ぜ込み、練り上げてゆく。耳たぶよりも堅い粘土ほどの固さになるまで、丹念に少しずつ粉末唐辛子を加えて練り込んでゆく。もうええやろというところまで練り上がったらポリ袋で密封して、さらにシール容器に入れ、冷蔵保存する。ひと月ごとに取り出して全体を良く混ぜる。その際、白いカビが出ていたら混ぜ込んでも問題ない。ただし青や緑や黒いカビが出たら、なるべく大きく切り取って痕を焼酎で消毒し、混ぜずに新しいポリ袋に詰め替えて様子を見る。たいていはこれで解決する。三ヶ月ほどで完成する。



 さて、来年は早々に旅立ってしまうので、畑の大根や白菜は、かなり残して行くのである。勿体ないから、なるべくキムチにつけて行こうと思う。白菜は、要らない葉を取ったら、水洗いする前に重量を量っておく。その15%の塩を用意する。白菜は丸ごと塩漬けするのが良いのであるが、なかなかそれは難しいので、私はバラして漬けている。葉にまんべんなく塩をすり込む。まんべんなく均一にすり込むコツは、全体をいくらかに分けておく事である。たとえば500gずつに分けて、塩も75gずつ分けておく。葉の白い根元から順にすり込む。一度やってみると、だいたいの塩の加減は指で覚えられるので、次からは目分量で行ける。それを出来るだけぴっちりと瓶に詰めて、白菜の倍以上の重石をして数日置くと、白菜が三分の一くらいの容積になるまで水が上がる。これを数回水洗いして軽く塩抜きをし、良く絞ってザルにあげておく。本場の白菜のキムチは、使われている韓国産の白菜の味が日本のものと決定的に異なるため、日本の白菜を使って本場の味を出すのはおそらく無理である。そこで開き直って、日本の材料を使った、自分の好きなようなキムチを漬けるのである。大根と人参とニラを用意する。大根と人参は千切りにする。薬念醤は、濃いだしや鰯エキスなどで少しずつ伸ばす。揉んでいるうちに手に馴染んで柔らかくなる。これに大根と人参とニラを入れて良く混ぜ、しんなりするまで置く。塩漬け白菜の葉を一枚ずつ取り出して、薬念醤をなすり付けて重ねて行く。ある程度まとまったら、一塊にして瓶の底に押し付けて行く。それを繰り返して瓶一杯になったら、さらに倍量の重石をして冷暗所に保存する。上の写真は、去年の薬念醤で漬け込んでいる。私のところでは、薬念醤を作ったら一年置き、翌年の白菜の漬け込みに使う。瓶は密封せず、蓋が外れる方が良い。というのはキムチが醗酵して、往々にして吹き出すからである。従って瓶の下に、バットなどを敷いて保存するのが良い。吹いた漬け汁は大変おいしいので、回収して調味料にしたり、次に漬けるキムチの薬念醤を戻すのに使ったり、ペットボトルに取り分けておいて、夏にキュウリの浅漬けに使うのも大変よろしい。たいてい12月に漬け込んだら、2月頃に吹き出す。まあ今回はその頃私は、RecifeかJohanesburgかコンゴの奥地で頭から脳みそを吹き出している事であろうが・・・


Posted: 日 - 12月 20, 2009 at 10:38 午後          


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