浅草サンバ・カーニバル見物の旅


東海道: 箱根ー東京



 芦ノ湖ですわ。やっぱり天下のなんやらちゅうだけあって、なかなか綺麗なとこですな。浜松辺りまでは、関西とそない違わん風景やったけど、駿河湾の海岸線からコッチの風景、それから箱根から東は、やっぱりsomething to beやね。日本て、ええね。



 茅ヶ崎ですわ。なんか、ほわっとしてて、延々と続く海岸線があって、近所の人が犬つれて散歩してて、なんの違和感もなく白人がぶらっとやって来て、のんびりしてるね。海岸沿いに国道があって、防風林を隔てて住宅街になってるねんけど、狭い路地のちょっと垢抜けた阪神間の山手の住宅街みたいでね、でもそんなに突っ張ってないのがええね。



 材木座というの鎌倉の東の端、すぐ向こうの岬越えたら逗子、その向こうは皇族の御用邸のある葉山ですな。なんでここへやって来たかというと、



 http://www.ngama.com

かつて和歌山県橋本市の山中で天然酵母パンの店をやっていた「窯゛(gama) 」という店が、鎌倉市材木座に移転したので、そこを訪れたかったのである。まだ朝早かったので店は準備中だったが、中を覗くと奥で人影が動いていたので、入って行ってみると久しぶりの顔が笑って出迎えてくれた。ここのパンはうまい。天然酵母と標榜しているが、そんなに硬くも重くもなく、軽く仕上がっているのに品があって、実にうまいのだ。夫婦でやっているのだが、ともに音楽に造詣も深く、橋本市の店ではJosephとライブをしにいったこともある。仕事で和歌山も担当していた頃には、なんとか用事を作っては店を訪れたものである。仕事の手を止めさせてもなんなので後ろ髪を引かれながらも席を立とうとすると、焼きたてのパンをいくつか詰めてくれた。これがまたうまかった。それをほおばりつつ、東京への道を急ぐ。カーニバルは昼過ぎに始まる。



 日本最大のサンバ・カーニバルにして、全国のブラジル音楽家の集まる催し、確かにその規模は大変なもので、特に後半に出場するチームは、人数・衣装・山車ともに意匠を凝らし、大掛かりで目を見張るものがある。ひとつのチームは、演奏陣が後部に位置している。それを拡声して一部を行列の前の方にワイヤレスなどで飛ばす。前座はちょっととぼけた初心者的なダンス・グループの行進から始まり、いくつかの作り物、アトラクション部隊、そして本格的なダンス・チームがいくつか続き、最後に演奏陣が連なる。特にアトラクションは、ちょっとした箸休めのような感じになっていて、棺桶から亡霊が出て来るシーンとか、海賊が暗躍するシーンとか、なかなか南米風の幻想的な物語の一場面を切り取ったようで面白い。演奏の方も、「エンヘード」という、サンバの中でもパレード用のマーチングでありながら、音楽的な表情もあり、リズムのウネリや絡み合いもよく研究されていて、聞きごたえがあった。しかし、穿った見方をすれば、余りにも大掛かりで厖大なチームが、一糸乱れずに統率されている様子は、確かにサンバが好きなのはわかるとしても、ちょっと薄ら寒いものを感じざるを得なかった。訊けば、これら取りを努める一団のチームたちは東京の選りすぐりで、例えば上智大学などにはサンバのエンヘード専門の養成機関があって、そこからどんどん若いメンバーが輩出されてくる。若い頃からそれだけを集中的にやるので、極めて高度な技術が伝承される。つまり、ここに出て評価される人々の多くは、我々のように世界中の様々な音楽を遍歴したあとに、たまたま今ブラジル音楽を聴いているのではなくて、いわばそれだけに特化された環境の中で純粋培養されたエリート集団といえるだろう。サンバを知るには良いかも知れないが、音楽として彼等の演奏がどうだったかというと、それはやはり画一的だったといわざるを得ない。まあそういうもんだといえばそういうもんなんだけどさ。



 夜は打ち上げとなる。これはもともと大阪のチームがはじめたものらしいが、サンバのサンバらしいあり方、飲み屋の店先で演奏する。もちろんマーチング用のものではなく、歌ものや演奏のセッションであるので、これは非常に音楽的だ。しかし近年、これに便乗して東京のチームが大掛かりにストリートで打ち上げ演奏をして、周囲の店とトラブルになる、中には昼のパレードとは関係のないミュージシャンが、騒ぎたいためだけに集まることもあるという。事実、私もこの夜、一見於いた隣の店で、明らかにパレードには参加していなかったミュージシャンが、かなりの音量で演奏して店と険悪な雰囲気になるのを目撃した。音楽は楽しむためのものであって、張り合うものではない。特に打上げの場ではそれは良くない。懲りすぎるというのが、日本人の良くないクセだと見せつけられ、早々に退散。そのあと、ぱうりんの案内で渋谷のBossa Novaの店に立ち寄り、終電近くで浅草に戻り、町中のコイン・パーキングに止めた車内で寝た。これはちょっと辛かった。

Posted: 土 - 8月 29, 2009 at 12:03 午前          


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