地歌 園の秋
菊岡検校作曲 八重崎検校箏手付 後楽園明居作詞 三下り・半雲井
たゆふすは 皆かしにいで 露ばかり 跡に苅る萱 桔梗屋の
その庭もせも 秋来れば ときに尾花や おみなえし
郭景色と うち連れて しゃんと小袖を とりかぶと
おのがたより 風寄り添いて 咲き乱れたる はぎすすき
(手事)
その手に絡む 朝顔の しののめがたの 朝嵐
空も匂うか 秋の七草
郭ネタ続きで恐縮であるが、お師匠様がこんな曲ばっかりやりましょやりましょ言わはんねやさかいしゃーない。これは京都島原の遊郭風景を秋の七草になぞらえて歌った「艶もの」である。演奏は大変難しい。特に速い手や極端な技法はないものの、歌と糸が別のメロディやフレーズを持って進んだり、意外な間の取り方や転調が組み合わさっていたりするので、地味に見えながら難曲である。さて、肝心の郭ネタであるが、いきなり「たゆふす」と出てくるのは「太夫」であって、これはもちろん遊郭の女性の最高の位である。その太夫を押し倒しておいて、そのカラダが程よく湿ってきたところで、蚊が多くなってきたので萱を借りるのに桔梗屋というその太夫の揚げ屋へ使いをやった・・・というのではなくて、残念ながら秋の遊郭のいっときをさらっと描写したものである。つまり太夫は秋風を楽しんで揚げ屋から座敷へ向かうのである。他の花魁たちもみな座敷に呼ばれて郭は繁盛しているようである。そこからは、秋の七草を繋げるための風流な言葉遊びといえるだろう。しかし秋の七草は「はぎ、すすき、くず、なでしこ、おみなえし、ふじばかま、ききょう」である。このうち歌詞に合致するものを探ると、桔梗・尾花すなわちススキ・おみなえし漢字で女郎花・萩まではわかるのだが、秋の七草のうち「くず、なでしこ、ふじばかま」が見当たらず、歌詞に出てくるもののうち「苅萱、鳥兜、朝顔」が取り残される。このうち朝顔は、むかし桔梗と言ったので、あるいは両方をかねたものかも知れぬし、苅萱もイネ科のススキに似た植物であるので、これとだぶっているのかも知れぬ。しかし鳥兜は強いていえば萩に似ているといえなくもないが、何故ここに現れるのかは不明。また秋の七草のうち出て来ない三種は、どう読みあがいても歌詞の中から見いだす事が出来ず、これひょっとしたら作詞者の瑕疵とちゃうん?・・・やて、ちゃんちゃん。
Posted: 金 - 10月 24, 2008 at 06:54 午後