多田銀山


道場ー千苅水源池ー境野ーソエ谷峠ー銀山ー広根

 あまりに天気がよいので、山へ浮かれ出てしまった。春の山歩き第一弾。道場から千苅水源池東岸へ上り、途中大岩岳をまくようにして酪農センターへ下り、松葉屋で昼飯にして、東の山に取り付き、何度かルートを見失いながらも、夕刻前には銀山にたどり着いた。神戸市北区から、西宮、宝塚、川西市を抜けて猪名川町へと、こう書けば大層だが、25,000分の1の地図1枚に裕に収まる距離だから、まあ普通のコースである。
 千苅水源池を周回するハイキング・コースは、途中伐採林に阻まれてはいるものの、家族連れも多く平坦な道のりである。大岩岳への分岐が何度かあるが、それらはやり過ごして、酪農センターへの道を探す。これは地形図がないとわからぬ。赤テープを頼りにクマザサの生い茂る道なき道を進む。谷筋沢筋のか細い踏み跡を追つていくと、突如として集落が現れる。酪農センターである。牛ばかりでなく馬もたくさんいて、バラック立ての厩舎が長屋のようにある。結構若くて可愛い女の子も多く働いていて、ハイカーが珍しいのか、陽気に手を振ってくれる。そのうちの一軒からお呼びがかかってコーヒーなどごちそうになる。暫く行くと境野の集落で、近所の農家のおっさん連中が畑から手を振って道を教えてくれる。境野は宝塚の奥、西谷地区の一集落で、子供の頃はサイクリング・コースであった。懐かしい雰囲気が今も残る農村を横目に見つつ、親しげに話しかけてくる農夫のおっさんと馬鹿話をしながら、地元の飯屋を教えてもらい、ついでに東の山に取り付く入り口を教わる。一旦松葉屋へ出て、近畿自然歩道を真横にはいるが、この道がくせ者で、赤テープ途中小さな水場で道が消えた。気がつくと来た方向も見失い、雑然とした木々に囲まれていた。仕方なく水の臭いを頼りに流れを捜すと、クマザサと灌木の茂る向こうにわずかな谷が見つかり、小さな流れをさかのぼって行くと急斜面で、土に流されつつ這いずり上がると、そこが近畿自然歩道であった。それを「えいやあ」と右にとって峠を越えると、整備された遊歩道に出た。ソエ谷峠である。そこからは、林道をかねた広い地道をひたすら下り、銀山はすぐそこであった。
 山深き銀山の集落は新緑で明るかった。まだ動力機械のない頃に出来た鉱山である。手掘りの坑道が見学できる。鉱山というと、なにか秘められた隠れ里、一攫千金を夢見る男達の欲望渦巻く世界、そんな暗い過去の残滓でも見つかるかと思ったが、意外にわかりやすく史跡化されていてちょっと残念であった。そこからバスの通う広根へは旧街道の面影残る車道である。夕刻に川西着。

Posted: 月 - 4月 30, 2007 at 11:55 午後          


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