針穴写真の実験


厚紙で箱を作り印画紙に撮影する

 おっちゃんが主催するNPOで地元の中学生を受け入れて体験学習をする企画があって、ブラジルへ旅行中のおっちゃんに代わって、彼らに針穴写真の体験をしてもらおうと思ったのだが、なんとか首尾よく成功したので、ここに成果を報告する事にしよう。
 針穴写真とは、要するに非常に小さな穴を通ってくる光を暗箱の中で結像させて定着される印画の事である。何故針穴を通った光が像を結ぶのか、というあたりから中学生に説明する。私も含めて近視の者が何人かいたので、「遠くの物が見えにくいときにどうする?」と訊くと、「目を細める」というから、つまり光の入り口を狭めて行けば行くほど、像が結ばれやすくなるという話をし、その究極が、いわば針穴写真機なのだというと、これは納得した様子であった。



 さて工作である。厚さ1ミリの厚紙を使って光の漏れない精密な箱を作る。サイズは、感材に13×18センチの大キャビネ版モノクロ2号印画紙を使うので、それがゆとりを持ってはいる大きさということで、底面14×19センチ、深さは今までの私の経験上8センチが適当と判断し、印画紙を何度か取り替えて複数枚撮影できるように、蓋付きのものとした。設計図を書き、材料を寸法取りし、内面を先につや消し黒の塗料でつぶしておく。これを組み立てて要所要所を遮光し、蓋との連結部分は、何度も遮光テープを貼ったり剥がしたりする抵抗を抑えるため、ビニールテープの二重張りとした。



 肝心の針穴は、ビールのアルミ缶を切ってのばしてつや消し黒で塗りつぶし、そこへ縫い針の先を軽く打ってごく小さな穴をあけ、目の細かいサンドペーパーでバリを落とす。これを蓋の中央に取り付ければ完成である。シャッター替わりの遮光テープで針穴を塞ぎ、チェンジバッグで印画紙を底面にテープ止めして、やおら撮影に出た。



 快晴の状態で、仮にISO100の感度ではEV値は16くらいである。絞り16でシャッター速度は250分の1秒、私の経験上、0.3ミリの針穴を深さ8センチの暗箱に取り付けた場合、露出時間は約1分である。そこで、晴れている間に実験をする。上のように同じ向きに3台並べて30秒、60秒、120秒の段階露出をして現像してみると、結構紫外線がきついのか、適正露出は30秒であった。この結果を以て雨の翌日、屋外の露出を計ってみるとEV値は10であった。絞り16ではシャッター速度4分の1秒の明るさである。そこで中学生に計算させた。どれだけシャッターを開いておけば良いでしょうか?






Posted: 土 - 5月 26, 2007 at 11:51 午後          


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