松浦アパート解体


アトリエ・セピアの終焉



 今日は、我が師匠のモノクロ写真塾「アトリエ・セピア」の撤去である。廃材がたんと出る。想い出深い暗室もこれで見納め。



 かつてこの建物の「顔」であった「Per Caso」、それを引き継いだ「Curio」も既に立ち退き、看板は外され、窓にはレースのカーテンがかかって、有終の美を飾っている。



 なにが美しいと言って、この建物は手作りの壁が美しい。その美しさは、明かりを壁際にかけて眺めると、ひときわ引き立つ。こんな光の中で、私も三年を暮らしたのであった。夢のような想い出である。今までは、それでも建物が実在しているという事が心のどこかに確かにあった。しかし、もうこの建物は無くなるのである。この光を見る事も、あの空気を吸う事も、あそこの音の響きを聞く事も、その匂いを感じる事も、もう出来ない。それは、亡き師匠が帰らぬ事と同じくらい、辛い事だ。

Posted: 土 - 11月 8, 2008 at 10:21 午後          


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